機密情報を含む文書の翻訳は、通常の翻訳よりもリスク管理が重要です。誤訳による損害ももちろんありますが、現場で一番起きると致命的なのは情報漏えいと契約・規程違反です。
本記事では「機密文書を翻訳したいが、どこまで外部に出して良いのか分からない」「AI翻訳を使うのは危険?」「安全に回す手順が欲しい」といった悩みに対して、一般論ではなく実務で回る線引き・フロー・チェック項目を整理します。最後に、要件を満たしやすい選択肢の例として、専用ツール(例:Languise)も紹介します。
最初に結論:機密翻訳は「やってはいけない」より「やり方」が重要
機密翻訳は、全てを禁止すると業務が止まります。一方で無防備に外部ツールへ投入すると危険です。現実的な解決策は、
- 機密度で線引き(入力可否を分類する)
- 出す情報を減らす(マスキング/分割)
- 委託先・ツールの条件を確認(保持・学習利用・監査)
- QAで品質を担保(数値・条件・否定・固有名詞)
の4点をセットで運用することです。
機密翻訳で起こり得るリスク
1) 情報漏えい(最大リスク)
翻訳のために文書を外部へ送る・外部ツールへ入力する行為は、内容によっては第三者提供と同等に扱われる可能性があります。漏えいの影響は、再発防止だけでなく取引停止・損害賠償に発展することもあります。
2) 契約・NDA・規程違反
「社内資料だから大丈夫」と思っていても、取引先のNDAや委託契約で再委託・クラウド利用・国外移転が制限されている場合があります。情シス/法務が止める理由は、ここにあります。
3) 品質事故(誤訳・条件の取り違え)
機密文書は、仕様・価格・納期・責任範囲など一語の違いが損害になりがちです。AI翻訳は“それっぽい文章”を生成できるため、見落とし型の誤訳が特に危険です。
4) ログ・保持・学習利用の不確実性
翻訳ツールやAIサービスは、ログを保持したり、品質改善のために入力データを利用する設計が含まれる場合があります。
不確実な点:保持期間、削除手段、学習利用の有無は、サービス・プラン・契約形態・管理者設定で変わることがあります。必ず最新の利用規約・DPA(データ処理契約)・管理者設定を確認してください。
ステップ1:まず「機密度」で線引きする
機密翻訳を安全に回すための最優先は、ツール選びではなく入力してよい範囲の定義です。おすすめは次の3段階です。
| 区分 | 例 | 翻訳方法 | 基本方針 |
|---|---|---|---|
| 低機密 | 公開済み資料、一般的な案内文 | AI/ツール利用可 | 通常QAでOK |
| 中機密 | 部内資料、進捗、一般の社内報告 | 条件付き(マスキング前提) | 出す情報を減らす |
| 高機密 | 顧客情報、未公開仕様、契約、研究データ、人事評価 | 原則、外部投入NG | 特別な環境のみ |
この分類がないと、「誰かが便利だから」だけで高機密まで投入し、事故につながります。
ステップ2:中機密以上は「マスキング」と「分割」で出す情報を減らす
マスキング対象(優先度順)
- 最優先:個人情報(氏名、住所、メール、社員番号)、顧客特定情報
- 次点:案件名、製品名、型番、価格、納期、契約条件
- 必要に応じて:組織名、拠点名、社内コード、未公開機能名
置換ルール例(復元しやすくする)
- 会社名 → A社 / B社
- 担当者 → 担当X / 担当Y
- 製品名 → 製品P
- 金額 → ¥YYY
- 日付 → 20XX/XX/XX
分割のコツ
- 全文を一括で投入しない(見落としが増える)
- 「背景→要件→条件→結論」を段落単位で分ける
- 重要条項(価格、責任、期限)は別枠で翻訳・二重チェック
ステップ3:ツール・外注先の確認項目
機密文書を扱うなら、ツールや外注先に対して最低限以下を確認してください。
- 入力データの学習利用:モデル改善に使われるか/オプトアウト可否
- 保持と削除:ログ保存期間、削除方法、バックアップの扱い
- 権限管理:チーム利用、管理者機能、監査ログ
- 再委託・第三者提供:サブプロセッサ、クラウド事業者の扱い
- 保管場所:データがどの国・地域に置かれる可能性があるか
- 契約:DPA/NDA、インシデント時の通知、責任分界

ステップ4:品質事故を防ぐ「QAチェック」— 機密翻訳はここが命
機密文書の翻訳は、誤訳があっても「それっぽい」ため見落とされます。よって、QAは“読む”のではなく見る場所を固定します。
一次チェック(必須・短時間)
- 数値・単位(% / mm / ± / 上限下限)
- 条件・例外(if, unless, except, provided that)
- 否定(not / without / exclude)
- 責任と権限(shall/must/should、責任主体の取り違え)
- 固有名詞(規格名、製品名、社内略語)
二次チェック(重要条項のみ)
- 重要段落を原文照合(条件・責任・価格・期限)
- 必要ならバックトランスレーション(訳文→原言語)
- レビュー責任者を固定(最終承認者)

ケース別:機密翻訳の現実的な使い分け
ケースA:低機密(公開情報、一般文書)
- AI翻訳で下訳→人が体裁整形でOK
ケースB:中機密(社内報告、部内資料)
- マスキング+分割でAI/ツール利用
- 重要数値・条件は必ず二重チェック
ケースC:高機密(顧客情報、契約、未公開仕様、研究データ)
- 原則、外部投入しない(社内環境か特別な契約形態のみ)
- どうしても必要なら、法務・情シスと合意し、専用ツール/運用を選ぶ
代替手段:機密翻訳で現実的な選択肢
機密翻訳の代替手段は、大きく3つです。どれが正解かではなく、機密度・監査要件・工数で選びます。
- 人手翻訳(社内/外注):高機密・契約・法務に強いが、コストと納期が重い
- 法人向け/管理前提の翻訳環境:権限・ログ・保持を管理しやすいが、導入コストが発生
- 翻訳業務に寄せた専用ツール:ファイル運用、校正、用語統一などで実務が回りやすい



よくある質問(FAQ)
Q1. AI翻訳に「学習されない設定」があれば機密文書も入れていい?
おすすめしません。学習設定は重要ですが、機密翻訳ではそれ以外に保持・削除・権限・監査・契約が絡みます。高機密は原則外部投入せず、必要なら組織として合意した環境で運用してください。
Q2. マスキングしても意味がないのでは?
完全な安全を保証するものではありませんが、「顧客特定」「個人特定」「未公開情報の露出」を大幅に減らせます。機密翻訳では“ゼロリスク”ではなく、リスク低減の積み上げが実務的です。
Q3. PDF/Word/PowerPointの機密資料を翻訳したい
ファイル運用が多い場合、コピペ翻訳は工数・漏えいリスク(貼り間違い)・体裁崩れが増えます。ファイル前提で運用できる手段を検討したほうが、結果的に安全で速いです。

まとめ:機密翻訳は「線引き→出す情報を減らす→確認→QA」の順で事故を防ぐ
- 機密翻訳の最大リスクは情報漏えいと契約・規程違反
- まずはツール選びではなくデータ分類(線引き)
- 中機密はマスキング+分割で外部に出す情報を減らす
- ツール/委託先は学習利用・保持/削除・権限・再委託を確認
- 品質は数値・条件・否定・責任主体を固定で見るQAで担保
もしあなたが、
- 機密情報を扱う前の確認項目を知りたい → Languiseのセキュリティは安全?機密情報を扱う前に確認すべきこと
- 誤訳を減らすチェック体制を作りたい → 翻訳ミスを減らしたい人がLanguiseを選ぶべき理由
- 機密も含む翻訳業務を“運用として”回したい → ビジネス文書の翻訳・校正にLanguiseを使うメリットとは
…という状況なら、上記の記事を読むことで「自社の要件に合う運用・選択肢か」を短時間で判断できます。まずはセキュリティ観点で“入力してよい範囲”を固めるところから始めてください。
